9日目 もう、あっという間に9日が過ぎてしまった。
予算も昨夜RJのせいでかなりオーバーしているし、残り少ない金で空港まで行かないといけない。 問題点は宿泊代を払えば、空港までのタクシー代が足りないのだ。 1万円札はあるのだが、わざわざ両替するとあとで面倒だからだ。 できれば両替したくなかった。
試しにRJと交渉をとることにした。 RJは昨夜遅くまで飲んでいたらしく、眠そうな顔で『1泊分頂きます』と言っていた。 払うと、「空港までいくら?」とわざと聞いた。 そしてRJは「250Rs」と言い、
「現在、1330Rsしかない。1200Rsは空港使用料だ。」と証拠として財布を見せると、驚きの顔を隠せないRJ。 待っていましたと思ったハオは「昨夜、1000Rs払ったんだからな!」と言うと、思い出したらしくRJは照れ笑いをして「OK!」とタクシーの運転手と交渉し、130Rsにまけてくれることになった。 「それぐらい当たり前だ。日本人はなんでもお金持ちってわけじゃないぞ。勘違いするな。RJよ。」と思うハオであった。
そのタクシーの運転手が来るまで、多少時間がかかった。 時計の針は10時を過ぎている。 空港には11時に着かないといけないのだ。 焦ったハオだが、RJは余裕そうな顔で「大丈夫」と言うのではないか。
ソファーでチャイをすずりながら待っていると、東洋人が通りかかりハオの隣のソファーに座ったのである。 思わず「日本人?」と聞くと、「そうです」と返事が返って来た。
彼は長野さんと言う。 とても感じのよさそうな青年だった。 大学の休みでネパールに飛んだと言う。
長野さんの自宅はハオの高校の近くだったので、懐かしそうに話をする。 と言ってもあんまし時間がなかったので、カトマンドゥのおすすめの店とか、ポカラの魅力を伝えた。 長野さんは真剣に聞いていた。 そして、ポカラは明日行くと言う。
最後に余った物をプレゼントすることにした。 色鉛筆、蚊取り線香、蚊よけスプレーをプレゼントすると、とても喜んでいた長野さん。 そして、長野さんに小声で
「RJは注意しろ。晩飯一緒に食べない?と言われたら、断った方がいい。昨日なんか俺が全額払われた。」
と忠告した(笑) お互いメアドを交換すると、丁度タクシーの運転手が来たので、出発の時間となった。
30分後、無事空港に到着。
ギリギリだったのである。
すぐ、ハオは空港内に入っても、広いし人が少ないのでどこに行けばいいのか分からなかった。 警備員に聞くと、『そこの場所で空港使用料を払って、2階に行け』と言っていることが分かった。 空港使用料1200Rsを支払うと、全部ネパールのお金がなくなったのである。 (細かいお金は除いて)
なにらかのチケットをもらって、そのチケットを警備員に見せ2階に行った。 空港内は人がめちゃくちゃ少なく、なんだかとても寂しい感じがした。 出国カウンターのところでパスポートスタンプをもらった後、どこに行けばいいのか分からなかったので『私は聴覚障害者です。どこに行けばいいのでしょうか?』とジェスチャーで表してみた。 すると、『そこに行け』と指を指すだけである。 インド、フィリピン、台湾、タイと違って、バリアフリー設備が遅れていることが分かったハオだった。 (それらの国は係員がゲート前まで連れてくれた。)
仕方ないのでその方向に向かうと、今度は手荷物検査場の前に出た。 なんと電灯も消灯しておりやっていないことが分かった。 近くに警備員がいたので、聞くと『まだやっていない。そこのソファーでも座って待っていなさい。』と言うのではないか。
ソファーでデジカメの今まで撮った写真を再生しながら今まで旅の流れを思い出しているとき、
近くを通りかかった2人の警備員に声をかけられた。 何を言っているのか分からなかったので、聞こえないということを伝えると『そのカメラで俺を撮ってくれ!』と言っていることが分かった。 仕方なく写真を撮って、撮った画像を見せると興奮中の2人。 よほどデジカメが珍しいようだ。 「サンキュー!」とお礼を言うと、どこかに消えてしまった。
30分後、荷物チェックが開始され、ハオは手荷物検査場を通過した。 すると、係員はハオの体中を触ってチェックした。 そして、ポケットに入っていたタバコライターに気がついて『これは押収する』と自分のポケットに中に閉まったのだ。 「タバコ吸えねーじゃん!」と怒った顔で口論するが、相手は折れない。
そのとき、別の係員が『もう一度手荷物検査場を通ってください』と言っていた。 まさか…ばれたのか!?と冷汗ものになった。 再び通ると、手荷物検査場から荷物の中をチェックしたとき『間違いない』と言う顔になって、『中を確認させてください』と言われた。
ドキドキ…
と緊張中のハオ。 荷物の中を確認され、何枚か巻いたタオルを見つけてしまった。 『これだ』と出したのは、昨日購入したククリのナイフだった。 『これはダメだ』と押収されそうになった。
その態度を見たとき、さすがに腹が立った。 「昨日、店員が日本に持ち帰れると言っていたぞ!2つで1000Rsだったんだぞ!金返せ!」と激しく口論すると、困った顔をする係員。 気がつくと、周囲に係員が集まっていた。 その中に一人の係員が俺の近くまで寄ってきた。 よく見ると、さっき『そのカメラでを撮ってくれ』と頼まれた係員であった。 その係員は「Friend.」と繰り返し言い、ククリのナイフを機内預けの封筒に入れてくれたのだ。 もしかしたら、カメラで撮ってくれたからこういう幸運な出来事になったかもしれない。 「撮らないよ!」と言えば、間違いなくククリのナイフは押収されたかもしれない。
無事、手荷物検査場をクリアし、待合室のところに行くと大勢の人が座って待っていた。 インド人、東洋人、西洋人など大勢いた。 そこで1時間待たないといけなかった。 本を読んでいたり、ボーっとしていたときあっという間に時間が過ぎた。
それにしても腹減った。 機内食が待ち通しい。 時間が来たら、タイ行き航空機に乗った。 15分後、いよいよ離陸となった。
それにしても驚いたのは、上空から眺めた空港はめちゃくちゃ小さいし、滑走路が短いということが分かった。 だんだん、カトマンドゥの町が小さくなってくる。 今日は天気が良かったので、エベレストなどを期待したが残念ながら雲に囲まれていて見えなかった。
航空機が雲の上空に入ったときに、お待ちかねの機内食が登場された。 が、「ポーク?フィッシュ?」と聞かれただけであり、タイ料理ではなくネパール料理だった(涙) と言っても腹が減ればなんでもいいものである。 夢中になって食事を続けた。
そのときに『飲み物はなににしますか?』と聞かれたので、ハオは高級そうに見えるウイスキーに指を指して頂戴した。 すると、隣の東洋人も同じものを指を指していたのでお互い笑っていた。 そして、隣の東洋人と乾杯をして、ちびちびと飲んでみた。 強すぎる。 が、味はなかなかおいしかった。 一杯目はあっというまに平らげて、2杯目もお代わりした。 半分酔いがまわってきた。
そのとき、隣の東洋人から声をかけられた。 正直言って、酔いがまわるのも早かったので全然記憶がない。 覚えていると言えば、その東洋人はヨーロッパから来た人で、学校で体育の先生をやっているということだった。 そして、サッカーをコーチしているという話もあった。
しかし、そこから睡魔に襲われて話を中断したまま深く眠ってしまったハオだった。
突然目を覚ました。 航空機が着陸した振動で目が覚めたのだ。 忘れていた… ネパールとタイの距離はすごく短いということを。 やばい。 酔いも残っている。 頭痛が激しくする…。
隣の東洋人と握手をして、あとはフラフラとした歩調で日本行き航空機を探した。 まさか、タイで酔ったまま着くとは思わなかった(笑) 人に聞いて、日本行きゲートをすぐ見つけることができた。
現在時刻は18時である。 22時まで計4時間待たないといけない。 近くにあるソファーにそのまま深く眠り込んでしまった。 20時ぐらいに起床したが、眠れなく非常に退屈だった。 近くにある衛星テレビにサッカーをやっていたので、それを鑑賞。
人も次第に増えてきた。 日本人も大勢集まってきた。 21時半ぐらいにソファーが埋まるぐらい、人が一杯になってきた。
どうすれば分からなくなったので、係員に聞こえないということを説明すると『そこで待ってください』と言われた。 22時になったとき、行列がそれぞれできてなぜか俺とお坊さん(障がい者?)だけ呼ばれて、別の車に乗り航空機に先に入り込んだのだ。 あとから入ってくる人達にすごい気をつかった。
22時30分ぐらいに離陸した。
日本到着は明日の7時ぐらい。 途中で機内食が出たので、それを食べて腹を満たすことに。
食後、ハオは航空機の中でひたすら眠るしかなかった。
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