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7日目
トイレに行きたくて目が自然に覚めた。
あまり眠れなかった気がする。
現在時刻は4時。
外は当然暗かった。
トイレに行きたかったが、部屋の中の電気はないし外に出ても八方見えないのである。
しかも、トイレの場所は分からなかった。
困ったハオは、近くにある屋根の上から用を済ませた(笑)

それにしてもなにも見えない。
周囲は暗闇と霧に囲まれている。
そのまま部屋に戻って、再び深い熟睡に走った。

次に目が覚めたときは朝の8時だった。
sukuはまだ寝ている。
外に出て、ヒマラヤ山脈を見ようと思ったが、残念ながら霧でなにも見えなかった。

1階に降り、宿のおかみさんに「ナマステ」と挨拶をして、食堂で食事をとることにする。
チャイとモモを注文した。
チャイはすぐ届いたが、モモは時間がかかった。
チャイ2杯目のときに、sukuが起きて降りてきた。
「オハヨウゴジャイマス」とお互い挨拶を交わす。
そして、モモが届き、sukuと半分ずつ食べた。
残念ながら、カトマンドゥと比べてみるとあまりおいしくなかった。

そして、sukuは口を開いた。
「私ハ 朝、起キテ 外ヲ 見タガ ヒマラヤ ハ 見エナカッタ」 と残念そうな顔をする。
「まぁ、雨季だからなあ。」と最初から覚悟をしていたハオだったので、仕方ないだけの気持ちだった。


ハオは「なあ、suku。昨日の来た道をそのまま戻るよね?」ときつそうな顔で聞くと、 sukuは「違ウヨ。途中カラ バス ニ 乗リマス」と言っていた。
助かった!と安心するハオ。

9時ぐらい、宿を出発することにした。
会計は全てsuku担当。
どうやらカトマンドゥでトレッキング予約したとき料金がそのまま含まれていたそうだ。

「デハ 行キマスカ」 とsukuの後をついていくハオ。
行きよりも帰りが楽だったが大変だったと言えば、 昨夜雨が降っていたらしく石の階段が滑ることだった。

突然sukuは言った。
「ネパール ノ 女性 ト 結婚シタラ ドウデスカ?」
「あはは。相手が日本語を覚えていなきゃ大変だよ」と笑って言うと 「ソレモ ソウデスネ」と笑うsuku。
「日本の女性は浮気してばかりだよ。ネパールはないかなぁ?」と聞くと「ネパール ハ 浮気スル人ハ 少ナイデス」と誇らしげそうに言う。
「今、日本の女性は働くし、男性の立場が無くなるんだよねぇ。又は子供の教育が悪い家庭も増えているし…」と言うと 「ソウデスネ。私ハ 男性ガ 働イテ、 女性ハ 子供ノ 面倒ヲ 見ル 家庭ヲ 望ンデイマス」と言うsuku。
その点は同感で、お互い楽しく会話が弾んだ。

それにしても、本当によく滑る。
一歩一歩用心に歩かないと、谷に転落してしまう。
sukuも何回か転びそうになった。

1時間ぐらい、道路が見えて、バスも止まっていた。
sukuは手を振って、乗りますと合図をしていた。
そのバスに乗ると、沢山のネパール人が座っていた。
やっと腰をおろすことができた。
あとは楽で戻ることができる。

ふと、自分の足を見ると、なにらかの赤い点が複数見つかった。
sukuに「まさか、これヒル?」と聞くと分からない顔をしていたので、地球の歩き方に乗ってある英文の「leech」に指すと、 sukuは意味が分かって「ソウデスネ」と言っていた。
ヒルに吸われても、全然痛みを感じないし痒くもない。
赤い斑点が残るだけである。
生まれて初めてヒルに吸われたハオだった。

10分後、バスは出発した。
相変わらず、猛スピードである。
途中で山登り開始した場所を通過して、行った場所をそのまま戻った。
バスの方が全然早い(笑)
あんなに苦労して歩いた道があっという間にどんどん過ぎていく。

どんどん人が入ってきた。
大きなカゴに色んな野菜を入れたおばさんやおじさんも入ってきた。
町に行き、野菜を売るらしい。
途中から満員になった。
そのとき、ハオは少々気分が悪かった。
疲れていたせいで気持ちが悪かった。
それに、ネパール人は香水をつけている人が多いので、 その香水のにおいのせいで益々気持ちが悪くなったが我慢していた。

1時間前後、sukuが「降リルヨ」と教えてくれたので、慌ててバスから降車する。
そこから少し徒歩だった。
そして、大型自動四輪車に乗って、街まで運んでもらった。


sukuは「コレカラ 私ノ 自宅ニ 来マセンカ?昼飯ヲ 作ッテ アゲマス」と言っていた。
ありがたい気持ちを受けとって、suku宅に行くことに決定する。
sukuは途中でフライパンとか購入し、タクシーでsuku宅に行った。

suku宅はアパートだった。
一人暮らしをしているのである。
sukuの部屋は3階にあって、中はべッドとテレビとコンロが置かれていた。
これでも立派な一人暮らし部屋である。

sukuは「コレカラ 買物 ニ 行キマス。テレビ デモ 見テ、待ッテクダサイ」と テレビをつけてくれ、そのまま外に出てどこかに行った。
ハオは番組をまわすが、見ていても面白くないものばかりだった。(当然、全部英語)
その中に戦争映画があったから、見ることにする。
と言っても英語なのでさっぱり分からない(笑)

30分後、sukuは戻ってきた。
そして、sukuはなにらかの写真を持って来て俺に見せた。
「私ノ 彼女 デス」と言っていた。
なるほど。
sukuと隣同士写っている彼女である。
彼女は東南アジア風の服装を着ており、少々ぽっちゃり系だった。
「美人だね」と言うと、うれしそうな顔をするsuku。

そして、sukuは料理を作り始めた。


その間、ハオは「洗濯してもいいかい?」と聞くと、 「ドウゾ」と洗濯場を紹介してくれた。
小さなタライにトレッキングの時、 汗いっぱい吸い取った異臭がするTシャツを 日本から持ってきた洗剤で洗った。

すると、ハオの足になにかがくっついていることに気がつく。
手で追い払うと、その物体はヒルだってことが分かった。
ウネウネと動いていて、ハオに再び近づいてくる。
気持ち悪いから、排水溝に流した。
ヒルに吸われた足からは血が出ていて、しばらく止まらなかった。

洗ったTシャツとタオルを外に置いて乾かそうとしたが、 曇りだったのですぐ乾くわけがなかった。

しばらくした後、sukuの手作り料理が完成した。
ご飯と鶏肉とスパイスを混ざった肉料理だった。
口に運ぶと、めちゃくちゃおいしかった。
レストランで出されば、何度も行ってしまうぐらいおいしい料理だった。
「日本でネパール料理店を出したら、人気になるよ」と言うと「アリガトウゴジャイマス」と喜んでいた。

そして、sukuはテレビのチャンネルを変えて映画を見ることにする。
「ネパールの映画?」と聞くと、「インド ノ 映画 デス」と答えた。

女性の警察官が敵と戦う映画だった。
見ていてワザとらしい動作が多かったが、sukuは興奮して見ていた。

食後「洗うよ」と言っても、「イイデス。ココニ 置イテクダサイ(食器を)」 と言われたので、お礼ができず残念だった。
しばらくsukuとその映画を鑑賞していた。
映画が終わった後、「行キマショウカ?」とsuku宅を出る。

これからView point hotelに戻る。
「View point hotelマデ 歩イテ トテモ 遠イデス。毎日、大変…」とsukuは言う。
たしかにView point hoteは遠かったので、バイクが欲しい理由に納得できた。
徒歩40分ぐらいの距離である。

途中で、sukuは「私ハ コレカラ 別ノ 日本人ヲ 迎エニ 行キマス。コーダマ ニ コレヲ 渡シテクダサイ」 となにらかの野菜を渡され、sukuはおとといハオが降りたバス停のとこまで向かっていった。


途中でAhil Momoに寄り、チャイを注文した。
なにを読もうかなと思って漫画を取ろうとすると、東洋人が座っていることに気がつく。
目と目が合うと、その東洋人に声をかけられた。
馴れ馴れしい奴だなと思うと、「僕だよ。ほら、おとといに会った…」
思い出した!
ホテルを間違え、困っている時に助けてくれた日本人であった。
会えるとは思わなかったので、とてもうれしく思ったハオだった。

「会えてとてもうれしいです。おとといは本当にありがとうございました」と再びお礼を言うと 「どこに行っていたの?」と聞かれた。
「トレッキングしていました。とても大変でしたよ」と言うと、「へえ、機会があったらやってみようかなぁ」という顔になっていた。

そこで、ハオはその青年に名前を聞いてみた。
その青年は"山田"さんと言うことが分かった。
名古屋の人だった。
年齢はハオより3つ上である。

色々話が弾んだ。
View point hotelはどう?とか、今まで海外旅行はどこ?とか、お互い仕事はなに?とか…
とても感じのいい人だったので、すぐ仲良しになれた。

デジカメを撮っていいですか?と聞くと、すぐ承諾してくれた。
そして、「その写真を僕の母に送って欲しい」とお願いされ、そのアドレス先を教えてくれた。


ハオが今まで描いた絵を見せると、その男性は「うまいなあ!」(お世辞?)と言ってくれ、絵を楽しく眺めていた。
そして、「これ良かったら、僕にくれないかな?」と言ってきたのである。
その絵とは地球の歩き方に載ってあるイラストを参考にし、スケッチしたものだった。
一応おとといの御礼のこともあったので、その絵をプレゼントすることにした。


そのとき、ハオはsukuからコーダマに渡して欲しい野菜を思い出したので、「今から、View point hotelに戻ります。すぐ戻りますので、待ってくれませんか?」 と言うと、「分かった。」と頷いていた山田さん。

View point hotelに戻り、コーダマに「sukuからです」と野菜を渡し、 「トレッキングは楽しかったですよ。sukuはGood guideです。」 と言うとほほえんでいたコーダマ。


部屋に戻りシャワーを浴びてから、Ahil Momoに再び戻った。

そして、山田さんと色々話をした。
「俺がバックパッカーを憧れたのは、さいとう夫婦の漫画からなんだ。さいとう夫婦を知っている?」
「さいとう夫婦?」と山田さんはさいとう夫婦先生のことを知らなかったので教えた。
丁度、Ahil Momoに「旅行人」の雑誌が置かれていたので、その中に載っているさいとう夫婦先生の漫画を見せた。

他にお互い好きな本を言い合った。
山田さんの好きな本は忘れてしまったが、俺は「アジアンジャパニーズ」と紹介した。

ほぼ旅に関係する話題が盛り上がった。

時計の針は17時になったので、「今日、晩飯一緒にしません?俺は"ラプ・クシュ"の店に行きたいと思うけど、知っているかな?」 と言うと、「ああ、行ったことあるよ。おいしい店だったよ。案内するよ」 ということで、一緒に晩飯を食べることにした。

Ahil Momoを出て、ちょっと歩いた。

すると山田さんは「ちょっとインターネットカフェに行きたいけど、いいかな?」と聞かれ、「俺も行きたいですよ」ということでインターネットカフェに向かった。
1時間50Rsで、カトマンドゥより少々高かった。
パソコンはWindow98で古い型だった。
日本の友人にE-mailをし、俺が先に終わったので、外で一服して待っていた。
5分後、山田さんも終え、先を歩き始めた。

すると、「そこがその店だよ」と教えてくれた。
とても雰囲気はよく、明るい店だった。

「その前に、僕の宿に来ない?」と言っていたので、山田さんが泊まっているゲストハウスに向かうことにした。
そのレストランの近くにあった。
一泊500Rsとうちが泊まっているゲストハウスより少々高かったが、とても広かった。
旅が長いせいで、自分の部屋のように服装とか荷物があちこち置かれてあった。

山田さんは「コーヒー飲む?」と言っていたので、ありがたくご馳走になることにした。
ハオはあまりコーヒー好きじゃないが、その場で飲んだコーヒーはとてもおいしく感じた。
そして日本が恋しくなるような懐かしい味がした。
「おいしいだろ」と山田さんはほほえむ。

続いて、山田さんは写真のアルバムを見せてくれた。
そのアルバムに、ネクタイをしている山田さんや、色んな友人、そして母が載っていた。
父の写真もあったので、ハオは「いいなぁ。父がいて…うちは高校生のときに亡くなったからね。」 と言うと、山田さんは「僕もだよ。3年(?)前に亡くなったよ」と言っていたので 「お互い気持ちが共通しますね!」と握手をした。
「残された母だけだから、母を大事にしようぜ」と話すと山田さんは「そうだね」と頷いていた。

30分位で部屋を出て、ラプ・クシュに向かった。
色んな人が集まっていた。
特に白人が大勢いた。
そのレストランはイタリアで料理を習得したネパール人のコックさんがいるのである。
つまり、料理もイタリア料理に関係するものが多いのである。
ハオはチーズスパゲティとマンゴジュースを注文した。
15分後、料理が届き、食べてみると、めちゃくちゃおいしかった。
日本では食べたことがないチーズとスパゲティが見事組み合わさっている。
マンゴジュースも懐かしい味がしておいしかった。


完食後、山田さんは「どのぐらいポカラにいるの?」と聞かれた。
「ああ、明日までなんだ。明日の朝早く、カトマンドゥのバスに乗るんだ。そしてあさってネパールを出る。」 と言うと「残念だな」と寂しそうな顔をする山田さん。
そしてハオは「そうだ。このカメラあげるよ。一枚も使わなかったので、使ってくれよ。」 と写るんですのカメラをプレゼントし、うれしそうな顔をする山田さんだった。
そしてハオは「11月位にヒマラヤが見えるよね。それを撮影して是非送って欲しいんだ」 とお願いして、山田さんは承諾してくれた。

山田さんはこれからの予定を話してくれた。
8月上旬から中旬までネパール・ビパサナ・センターの所で修行。
ここは瞑想コースが人気で、あるがままにものを観るという意味のビパサナ瞑想法は、 古代インドで実践されていたもので、2500年ブッダによって再発見されたといわれている。

そして、修行後インドに渡って、カルカッタで日本対インドのサッカー試合を見に行き、10月位再びネパールに戻るそうだ。
「いいなぁ…うちは会社員だから時間に縛られているんだよ…」と羨ましく思えたハオだった。

21時位、「そろそろ戻るよ。良い旅を続けてね!」と山田さんと握手をして、View point hotelに戻ることにした。


View point hotelに戻るまで正直言って怖かった。
街灯が少ないので、360度全然見えない暗闇だった。
そして、その暗闇から泥棒とか襲われないだろうかと警戒して、人が通ると背後を常に確認していた。

うぉっ!
途中で自動車のスピードをゆるめるための障害物にぶつかりそうになった。

1メートル先まで見えないぐらい暗闇だった。
ほぼ勘にたよりながら、ゆっくりとした歩調で、戻った。

途中で水溜りに足を入れてしまったが、難なく無事にView point hotelに到着。

中からsukuが出てきた。
「ドコニ 行ッテイタノ?」と心配していたsukuだった。
「途中で友人と会ったから、食事していたんだよ。遅くなってごめんな。今から俺の部屋に来る?」と言うと「仕事ガアルカラ 終ワッタラ 行クヨ」と約束をした。
ハオは部屋に戻って、ベッドの上でのんびりしていた。

いよいよ明日カトマンドゥに戻るんだ…
もっとポカラにいたかったなという気持ちになった。

30分後、ノックの音がしたので、ドアを開けるとsukuだった。
sukuにタバコをすすめて一緒にふかしながら、sukuの将来(日本に来ること) についていろいろ話をした。
俺はsukuに色々教えた。
「日本のアパートに暮らすことは難しい。 外国人を断る不動産が沢山ある。 品川あたりだったら大丈夫かも?」とか 「日本は高い。50万位貯めないと生活に辛いかも・・・」とか 「日本のバスは210円。電車は距離によって値段が違う」とか sukuは真剣に聞いていた。

そして、最後には 彼女を喜ばせる日本語をメモ帳に書いて渡した。
「kimi no hitomi ni kannpai(君の瞳に乾杯)」
「kimi ha houseki no youda(君は宝石のようだ)」
「watashi no inoti ni kakete anata wo ai suru yo(私の命にかけて貴方を愛するよ)」 等…
sukuは「アリガトウゴジャイマス」と大喜びだった。
一つだけハオが心配したのは…
「なんで、あなたがこんな臭いセリフをはくの!?」と彼女から言われることである。
sukuよ…神のご加護がありますように(笑)

話は一時間ぐらい続いて、「明日帰るんだよなあ。寂しいなあ。明日見送りに来れる?」と言うと 「他ノ 仕事 ガ アル」と言うsuku。
でも、しばらく考え込んだsukuは「明日 コーダマ ニ オ願イ シテモラウヨ」と 見送りに来てくれるそうだ。
「明日 ノ 6時ニ ロビー デ 会オウ。私 ハ モウ 寝ルヨ」と自分の部屋に戻っていった。
(sukuの自宅は休日だけ戻って、仕事期間はView point hotelで泊まらせてもらっているそうだ)

荷物の整理を終えて、そのまま床につく。
「ポカラに来てから良い友達ができたなあ」と大喜びのハオだった。

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