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3日目
朝9時ぐらい起床。

昨日は飲みすぎて、全然記憶がないのでもっちに「昨日、俺変な事しなかったか?」と聞くと、もっちは「酔っているときに襲われたよ」と言う。
慌てて「マジで!?」と言うと、「冗談だよ」ともっち。
俺が記憶がないことをいいことにそういう悪趣味なジョークはやめなされ・・・(汗)

テレビを見ようとするが、電源がつかない。
おまけに部屋の電気もつかないのだ。
なんと朝から停電中だったのだ。
トイレも暗く、ろうそくで火をつけないといけなかった。

チェックアウトが11時なので、それまで朝飯を取ることに。
レストランはホテルの最上階にあって、展望台みたいで見晴らしはよかった。
あちこち家族らしい白人が食事をしていた。

朝飯は、モーニングセットというものを頼んだ。
モーニングセットというのは、パン、サラダ、果物、紅茶、ジュースセットである。


「タージマハルはどこにあるだろう?」とハオは周囲を見回ったが、見つからないので「Where Tadsch Mahal?」と店員に聞いてみる。
店員は指を指してくれて、その方向に目を向けると、遠くてあまり見えないけど、たしかにタージマハルが見えた。
「今日、そこに行くんだなあ」とハオは楽しみに思った。
(タージマハル:1983年、インドを代表する建築物として、インドの世界遺産として認定された。ムガル朝の皇帝の后のお墓です。全て大理石でできており、細かい彫刻が至る所に施されています。)


食事を続けていたときに、ハオは違和感を感じた。
もっちに「なんだろう…?」と伝えると、もっちも同感だったらしく「地震かな?それとも下の階はなにもないのかな?」と言っていた。
たしかに変なのだ。
地震みたいに振動が連続で続いている。
ハオは早速店員に「Hey!」と合図をし、「Earthquake?(地震?)」と聞いてみた。
店員は意味が分からなく、首をかしげたので、ハオはジェスチャーで「揺れている揺れている」と見せると、意味が通じた店員はなにかを英語で筆談してくれた。
もっちがそれを通訳してもらうと、もっちは納得した顔だった。
「店員が言うには、ここは周っているんだよ!360度見渡せるようにゆっくりゆっくり周っているんだ。」
どうやって周っているんだ?と不思議だったが、よく見ると景色が動いていることが分かった。
不思議なホテルだった。
しかし、振動しながら食事をするのはあまりいい気持ちではなかった。

食後、早速「チップ」が始まった。
無視するのも面倒なので、10RSを差し上げた。
もっちは「高いよ!」と言っていたが、日本円で直すと25円は安いのでボランティア気分で金額のことなどどうでもいい気分だった。

部屋に戻り、ハオは風呂にお湯をためて久々入った。
このホテルが一番居心地が良かったのである。

11時前に、ロビーに着くと、タブールとサミットが待っていた。
タブールとサミットは"どうだった?"と聞かれたので、「Very good!」と返すと喜んでくれた。
しかし、タブールとサミットはどこで寝たんだろう?
もっちに聞くと「さあ?旅行会社専用の宿があるんじゃないかな?」と言っていた。
知りたかったので、もっちが「貴方達は昨夜、どこで寝たのですか?」と英語で筆談して見せた。
サミットは笑って、"ここだよ"と車の中に指で指していた。
まさか…車の中で寝たのか?
「Are you Cold?(貴方は寒かった?)」と聞いてみると、サミットは頷いていた。
次第に、2人は悪い気持ちになってきた。
もっちは「これがお客さんのために尽くす仕事だろうね。感動した。」と呟いていた。

そして、タブールは"タージマハルはガイドをつけた方がいいよ"と言ってきた。
俺は「No Guide」と断ろうとするが、"ガイドがないと危ないよ。"と念押ししてきた。
そこまで言ってくるとは、ガイドは必要なんだな…と思って、お願いしてみる。
ガイド料は50RSだった。
そして"タージマハルはタバコ、電卓、機械などは持ち込み禁止だ"と教えてくれ、そのようなものはタブールに預けることにした。

途中で、一人の男が乗ってきた。
彼がガイドをしてくれるそうだ。
かなり若い人であった。

20分後、タージマハルの近くに到着して、ガイドの跡をつけることにする。
途中途中、商品を売る少年、「バクシーシ(お恵みを)」と寄ってくる子供や老人達に「No!」と断りながら進んだ。

門らしきところに着き、ガイドは"入場料が500RSするよ"と言ってきた。
500RS!?
日本円で直すと1250円である。
高すぎる…(汗)
しかし、驚いたのはインド人は10RSであって、異国人は50倍も金を取られるのである…。
不満に思ったハオだったが、渋々と金を払うことに。
ああ…どんどん金が無くなっていくよ…(汗)

その時、もっちが俺にこういうことを言っていた。
「猿岩石もタージマハルに行ったけど、金がない彼らはどうやって入ったんだろうね?」
たしかに!
猿岩石もタージマハルに行ったことは覚えている。
あのときは金欠でバイトをしていたはずだった。「やらせだろうね」とお互い納得した顔をした。

入場ゲートらしいところに、人体チェックさせられた。
ダホールはそういう意味で言ったんだね。と納得したハオでした。

その前に、日系人の男性がインド警備員と喧嘩をしていた。
インド警備員は"これはダメダメ!"と右手にはラジカセを持っている。
日系人らしい男性は罵言を浴びながら、去っていった。
人体チェックをクリアした俺ともっちはタージマハル内に入ることに成功した。

いよいよタージマハルが見れるんだ…
そう思うと気持ちが高ぶってきた。
よくテレビ、本とか見る、あのタージマハルが遂にハオの目に映った。
ものすごい感動的だった。
「これがタージマハルかあ!」と感無量中のハオでした。
何度もカメラを撮って、タージマハルの間近まで向かった。



するとガイドは"中に入るには、裸足か靴に丸めるものを履くかのどちらかなんだ。靴に丸めるものは一人5RSかかるよ。"と教えてくれた。
ハオは裸足でもかまわなかったのだが、もっちとガイドは靴に丸めるものを履いたので、仕方なくハオも履くことに。
大理石の上を歩いているのだ。
大理石を触ってみたが、ひんやりとして気持ちがいい。
そこで昼寝してみたら、どれほど最高なんだろう…と思っていたハオでした。
タージマハル内には入れなかったが、その周囲で見れただけでもインドまで来たがいがある!と思った。


1時間ぐらいタージマハルで楽しんでいたとき、ガイドは"行くよ"と手招きをして、タージマハルから去ろうとした。
ハオは何度もタージマハルを眺めていた。
これが最後だろうか…?次回来ることはあるだろうか?と何度も思っていた。


タージマハルを後にして、車から降りた場所に向かった。
すると、タブール達は見当たらない。
ガイドは携帯電話で連絡しあっている。

そして、ガイドはもっちになにかを話し掛けた。
もっちは俺に"ガイド料はいくらでもいいって。その人はお金持ちらしいから、金額は気にしないそうだ"ということだった。
俺はもっちに「任せる」と言い、もっちは50RS払ったそうだ。

オートリキシャに乗って、タブール達がいるところまで連れてくれた。
(オートリキシャはこっち負担である)
すると、サミットが待っていた。
タブールは車でどこかに行ったみたいだ。
戻ってくるまで待機中である。

それまではいいんだが、周囲の客引きらしい人がマジでウザかった。
何度も"おいでおいで"と引っ張ろうとするが、俺は"ここでいい"と手で合図をする。
もっちはその客引きに連れ去られるまま、どこかに行ってしまった。
俺は26度ぐらいのある太陽高熱の真下で待ち続けた。
暑くなってきたので、日陰で休もうとすると、もっちが客引きらしい人と話し合っている。
その方向に目を向けると、複数のカーペットが並べてある。
すぐ、カーペット屋だと分かった。
カーペットの人が、"おいで、おいで"と俺を手招きし、俺も結局強引に連れ去られ、「やれやれ」と暇つぶしで見に行くと、いくつかのカーペットを見せられた。



たしかに、見栄えはいい。
そして欲しくなるぐらいのデザインだった。
しかし、金がない。
すんなり「No money.」と断った。
すると、カーペットの人は "ここだけしか手に入らない。これを手にはいれば貴方は幸せになれる。私たちは幸せを貴方に分けたい"と言っていた。
俺は思わず吹き出し、日本語で「うまいねえ!あんた商売人になれるぜ!」と言ってしまった。
ギョトンしたインド人だったが、興味を示したと思ったらしく、他のカーペットも見せてきた。
「あー、だからノーマネーだって」とはっきり断った。
そして、俺は「もっちが買うらしいよ。彼にもっともっと説得しなさい。俺に言っても無意味だから」とからかうように言った。
そして、カーペット人はもっちに必死の説得。
最後はもっちは「よし!買うぞ」と決定したらしい。
俺はカーペットの人に「おめでとう!」と握手した(笑)
途中、チャイをご馳走してくれた。
俺はタバコをふかしながら、色々考えてみた。
「俺もカーペットをお土産目的で買おうか…。現金はないので、クレジットで買おうかなあ?」と思った。
そしてカーペットの人に「Credit card Okey?」と聞いてみた。
すると「No Problem.」と笑顔で俺を見る。
いくつかのカーペットを見せてくれるが、これから旅のことを考えると、大きいのをもらっても邪魔になるだけだ。
俺は「No!Big big!! I want small(大きいよ!私は小さいのが欲しい)」と言ってみると、小さいカーペットを見せてくれた。
うん、これなら適当だし、日本に持って帰れるな。と思って、カーペットを買うことに決定した。
問題は値段だ。「How much?」と聞いてみたところ、「3500RS(8750円)」と言ってきた。
高いな…
「No!2000Rs」と値段を下げた。
向こうは「No!No!3200Rs.Okey?」と値下げしてきた。
しかし、俺は「2000Rsじゃないと買わないよ」と負けないで言った。
交渉は30分ぐらい続き、最後は相手が負けた。
「Okey!!!2000Rs!!」
心底に「勝った…」と勝ち誇ったハオでした。
クレジットカードで手続きをし、カーペットを買うことに成功した。
かなり小さめなので、リュックにも入れる。
玄関用のカーペットなので「母のお土産はこれに決定」と思った。

すると、タブールが来ていることに気がついたので、カーペット屋を後にして、出発となる。
「これからどうするだろう…?」と思っていると、別のところに連れ去れた。
「なんだ?ここは?」と思うと、なにかの建物の前に大理石を作っている人の前に連れ去れる。
あとになって分かったが、ここはタージマハルで修正を行う場所だった。
ふぅんと眺めていたが、その後、建物の中に連れ去れた。
そして、俺ともっちは嫌な顔をした。
なんとそこはお店だったのだ。
いくつかの大理石を売っている。
なんでタブールはそんなところに連れたんだろう?と不思議に思った。
結構かわいい大理石が売っていたので、興味よく見ているとお土産にピッタリなものばかりだった。
「これもお土産で買うか…」と「How much?」と聞いてみると、どれも「1000Rs」と返ってきた。
高すぎる!!
"もっと安いのを見せてくれ"と言うと、小さな大理石の象を見せてくれた。
値段は2個セットで1000Rsだった。
高いので、真剣に考えていると、店員は「Okey!」とおまけで1個追加して3個となった。
3個で1000Rsである。
ここで手を打つことにする。
2500円の買い物とは少々高かったかなあ?とあとで少しずつ後悔するハオだった。
もっちはカーペットを買ったので、ここは買わないままだった。

俺はもっちに「まさか…。これからいくつかのお土産屋に連れ去れるんだろうか?」と心配し、「"俺らはお金がない。お土産屋は不要である"ということを英語で伝えてくれ」とお願いした。
タブールとサミットはなにらかを話しており、にやりにやりと笑っていた。
この場面を見て、俺は「なにこの日本人。金がないってよ。金持ちの国から来たのにねえ」と言っていることを想像し、ぶん殴りたくなった。
そして、承知したような顔となり、車で昨夜夕食した場所に連れ去れ、ランチすることにする。

俺ともっちは安いカレーご飯とミネラルウォーターを頼んで、食事した。
量が多かったので、安くても腹いっぱいとなる。
ここもチップ払いだったが、もっちは意地を張って払わない態度を示した。
その態度に気がついた店員は諦めて去った。
ナイス、もっち。

ランチ後、これからどうするんだ?と思ったが、ある店に連れ去られ、タブールは店の中で話し合い、ある男と話し合っていた。
あの男の片手になにかのチケットを持っている。
すぐ列車の券だと分かった。
ある男は「どうだ!一生懸命取ってやったんだぞ!」というような会話をタブールとしているように見えた。
するとタブールが手招きをして、俺ともっちは店の中に入った。
オフィスに座らせ、一人の男が出てきた。
タブールは"彼がボスだ"と言っていた。
ITDC会社のボスだろうか?
それともアーグラITDC会社のボス?
よく分からなかったが、このボスが「ツンドラ駅からムガール・サライ駅、ムガール・サライ駅からデリー駅」までの列車予約券を見せてくれ、"これからどうするんだ?"と会話になった。
そして、"バラナシでホテルを手配するがどうする?"という会話になるが、安い宿に泊まることを決まっている我々は断った。
するとボスの顔は変わって、"タブールにチップを払え"と言って来た。
タブールもニヤリニヤリと笑っていた。
俺はここからタブールの態度に激しくむかついた。
"デリーのITDC会社はチップを払うということは聞いていない。我々は払わない" ということを伝えても、"払え"といか言わない。
マジで切れて殴ろうと思った。
しかし、ここで争っても仕方ない。
冷静に対策方法を考えた。
まず「How much?」と金額を聞いた。
ボスは「500Rs.」と言ってくる。
冗談じゃない!誰が払うか!!
もっちも曇った顔になってきた。
次第に、面倒くさくなった俺は"No!100Rsなら手を打とう!"と言ったが、ボスは「No.」と断れた。
金がないということに気がついたボスは"300Rsでいいよ"と値下げしてくれた。
これもすごく嫌だったが、次のステップに進むには金を払うしかないのか…と思ってもっちと 150Rsを出し合い、タブールに渡した。
タブールは喜んだ顔で財布に入れる。
もし、ここが日本だったら「ふざけんじゃねぇよ!お前らはお客を舐めているのか!?警察に訴えるぞ!!」と言えるのだが、ここはインドだ。
警察もワイロを支払えば許してくれる国である。
怒りをぐっと抑えて、ツンドラ駅まで送ってくれと言うと、「Finish」とボスは言う。
はっ?
もっちは「どうやら、ここで終了らしいよ。ここから自分らの力で進むしかないみたい」と言ってくる。
なんでここで終了なんだ!?と激しくむかついた。
ツンドラ駅までここから車で40分という距離なのである。
しかも複雑な道なので、なにも知らないところに降ろされたと同じである俺らはひどく困った。
おまけに太陽も沈みかけている。
長い交渉が続くと、ボスも切れたらしく外に飛び出していった。
タブールとサミットが座っているだけだった。
俺はタブールに"ツンドラ駅まで送ってくれ!ここまでのお金は支払う!"と言うと "ボスに言ってください"と冷たい態度で俺らに言う。
そして、ボスを再び呼んで、ツンドラ駅まで送るだけの形にすると、"それなら500Rs追加だ。"と言ってくる。
相手の方が1枚上手なのだ。
ひどく悩んでいると、ボスは"バラナシでホテルを手配してくれたら、車の運賃料は5ドルでいいだろう"と言ってきた。
問題はそのホテル代が15ドルすることで、合計20ドル近くである。
俺も負けず、"バラナシでホテルまで迎え付きなら手を打とう"と言ったが、"迎えなしだ"とボスは言う。
おまけにもっちは「もし、バラナシについても宿が見つからなかったらどうしよう…?」と弱音を吐く。
そして、これから列車旅である。
バラナシに着いても違う世界だから、精神的疲労もどっとわきあがるだろう。
そう考えると初日はホテルが一番安全かなと自分で判断した。
車でツンドラ駅までだけなら1250円。
車でツンドラ駅までは525円。
バラナシのホテル予約で4100円。
この差は3375円もあるのだが、明日の宿泊地は確保される。
どっちが得なのか悩んだ結果、バラナシのホテルを選択することにする。
「Thank you」とボスの顔は笑顔になる。
ここまではいいんだが、問題は所持金だ。
これで残金は1500ルピーぐらいである。(3750円)
これであと6日どう過ごせばいいだろう・・・(汗)
お土産も買えないぐらいである。
おまけにここまでの話し合いだけで、4時間近くもかかった。
ハオは疲労たっぷりだった。
それに言葉にできないぐらい怒りと自分の無力さを感じていた。
あとになって、バラナシのホテルを予約しなければ良かった!と大きく後悔することが分かったのは帰国してからだった。
話が決まったことで、契約書みたいなものに書かされ、そして車はツンドラ駅に向かって出発となった。

周囲は暗くなりかけてきた。
そのとき、タブールは"日本に帰っても、我々のことを忘れたりしないかい?"と言って来た。
俺は軽くふっと微笑をかまし、心の中では「あンたがこういうやつだった。それは忘れることはないだろう」と思った。

周囲が闇の色に染めた頃に、ツンドラ駅に到着した。
ツンドラ駅は古い駅だった。

タブールは"赤帽と一緒に行くといいよ。赤帽に100Rs払うように"と言って来た。
又払うのかよ…と心底嫌になったハオでした。
(赤帽:赤い制服を着て、腕にライセンス票を巻いているのが赤帽だ。インドの列車は聴覚障害者に分かりにくいので、赤帽に頼むのが一番無難。赤帽は列車が来ると教えてくれたり、荷物を持ってくれたりする。)
本当にお金がないという様子を見て分かったタブールは"Okey.50Rsでも大丈夫だよ"と赤帽と交渉して値下げしてくれた。
ただし、前払いだったので裏切るかどうかも不安があった。

ここでタブールとサミットはお別れだった。
ハオは心底むかついていたから、最後まで手をふらなかった。

そして、赤帽はもっちの重装備を背負いながら、先に歩いていった。
その赤帽は60代ぐらいなのに、こんな重い荷物を持たせて悪いなと気がした。
それが仕事なので仕方ないのだが、俺はすくなくても自分の中にある良心に傷がついたような気がする。
先に行く赤帽の後をついていきながら、駅の中に入る。
電気も少なく、とっても古い駅だった。
奥に行くと、2等待機室があった。
そこは2等列車を予約した人の部屋である。
何人かインド人が座っていた。
荷物をおろすと、赤帽は”列車が来たら又戻るね”を言ってどこかに去った。

一服しているとき隣のインド人が話し掛けてきた。
警備員なのかよく分からない人だったが、銃を自慢して見せてくれた。
ハオは本物の銃を持つのは初めてである。
"持たせてくれ!"とお願いして、銃を持たせてもらった。
その銃は獣を狩る時に使用するスナイパーライフルに近いものだった。
重量感があり、重かった。
生まれて初めて銃を握った。
弾も自慢して見せてくれた。
そして、写真を撮らせてもらうと、そのインド人は"その写真を俺のところに送ってくれ"と頼まれた。
住所も書いてくれたが、とても汚い字なので読めたものじゃない・・・



うちらの列車は夜の23時に来る予定である。
あと5時間ぐらいある。
それまで待たないといけなかった。

そのとき、日系人の2人の若者が2等待機室にやってきた。
どうも日本人らしかったので、試しに「Japanese?」と声をかけると、「Yes」と返って来た。
うれしくなったハオは「俺も日本人ですよ!」と言うと、「そうなんですか!」と笑顔で答える日本人2名。
早速自己紹介する。
2人の若者は「ダイゴさん」と「ヒラガさん」だった。
バイトで知り合った同士で、大学を卒業したばかりの人だ。
2人の年齢は俺と同じ23歳だった。
すぐお互い打ち解けて、色々旅について話し合った。
ダイゴさんは俺と同じ年齢であっても、15カ国以内は周っていることが凄いと思った。
そして、ヒラガさんは口癖のように「4月から社会人だなあ…嫌だなあ」と呟く。
2人の住まいは東京だった。
お互いメールアドレスを交換して、色々話が進んでいくと、2人はアーグラからバラナシに行くということが分かった。
そして、列車時間は1時予定で、うちらより2時間遅く出発するのである。
しかも、うちは特急なので8時間近く到着するが、ダイゴさん達は急行なので15時間近くかかるのであった。
うれしく思えたのは、バラナシに泊まるホテルは偶然ダイゴさん達と同じであったことだった。
ダイゴさんは「バラナシに着いたら、待ち合わせし夕食を一緒に食おう」と誘われた。
お互い、次の日の夜18時〜19時ホテルのロビー前で待つことにした。
こうやって、親しくなったダイゴさんとヒラガさんであり、偶然旅の中で出会えたことを喜び、お互い握手を交わした。

ここの駅は面白かった。
2当待合室を出て、ホームで一服していたときに、ヒラガさんも一服しに来た。
その時だ。
ヒラガさんが「危ない!」と言う。
俺はすばやく身をかわすが、その方向に目を向けると・・・
なんと!無数の鳥が駅の屋根の近くに止まっていた。
おまけにう○こ爆弾が炸裂するぐらい危険な状況だった。
こんな無数の鳥が止まることを見るのは初めてであり、少々恐ろしく思えた。

途中、俺らはダイゴさん達に「赤帽には前払い?後払い?」と聞いたところ、「後払いだよ」とダイゴさんは言う。
それを聞いた俺らは不安になり、「もし、列車が来ても赤帽が来なかったらどうしよう…?」と思った。
俺は「もし、アナウンスとかありましたら、連絡をお願いできますか?」とお願いしてみた。
ダイゴさんは承諾してくれたが、問題は「今まで何度も列車が来ているが、アナウンスはなかったぜ」と言う。
ダイゴさんは「ホームを覚えて、列車が来たら自分で乗ればいいよ」と言い、もっちとダイゴさんはホームを探しに行った。
インドの駅は日本と違って不親切であり、分かりにくい。
おまけに、電車も何時間遅れたりするのも当たり前だと言う。
戻ってきたとき、もっちは「ホームは覚えたよ。23時前後になったら、ホームの前で待とう」と言ってきた。
「インドに来たばかりなのに、後が思いやられるな」と思ったハオだった。

何度も駅の中で停電が起きて、これも面白かった。

時間が過ぎると、白人、日系人も入ってきて、2等待合室は満室近くになった。

その時、ダイゴさんは買って来たバナナ、ブドウ、ミカンの果物をうちらに分けてくれた。
うちらはなにもお返しするものがないので、悪いなと思ったが、めちゃ空腹だったので、ありがたくその好意を受け止めた。
(金欠なので、バラナシまでなにも食わないで我慢しようとした)
空腹なせいかその果物はとてもおいしく思えた。

23時ぐらい、そろそろホームに行こうかと思った時に、赤帽がやってきたのだ!!
"そろそろ来るよ"と合図をしてくれ、うちらはダイゴさん達に「じゃあ、あとでホテルで会おう!」と握手を交わし、ホームに向かった。
そのホームでしばらく待った後、列車が来た。
"この列車だよ"と赤帽は言う。
とても古い列車だった。

しばらく後、赤帽は駅員ともめていた。
ようやく話がはずんだとき、列車の中に入ることに成功した。
中は3段ペットが並んであり、真っ暗だった。
皆は熟睡中だったのだ。
うちらが寝るペットまで赤帽は案内してくれ、その後「Good lack」と笑顔で去った。
この笑顔で赤帽の歯が見えたのだが、すごい歯並びが悪く、欠けている歯もあった。
だが、この笑顔は満面な顔であり、「ああ、シャッターを切れば良かった」と後悔した。

3段ペットにもっちが2段で、うちが3段と決めた。
リュックにチェーンを巻いて、そのリュックを枕代わりにした。

その時、列車が動きはじめた。
ゆっくりとゆっくりとガタンゴトンという音を聞きながら、しばらく天井を眺めていた。
「これからバラナシなんだなあ。一体どんな所なんだろう」と、空腹になりかけている腹を抑えながら、眠りにつくことにする。

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